微分幾何学への道
なんだか”微分幾何”という言葉はいたるところ耳にする。
だけどそれが何なんかはわからないという所からどうやって微分幾何を身につけて行くのか
と言う話。”どうやって身につけて行くか”であって、”何なのか”の話ではない。
微分幾何と言われて何を思い浮かべるか?
フレネセレ?曲面論?相対論?
一言で言えば、なめらかな多様体を舞台とした数学。
基礎用語から聞きなれないと思う。
また、そもそも何に応用されているの?
要はイントロダクションと分野を俯瞰した相関マップみたいなものを知る所からはじめるべきかもしれない。これは比較的難しい本の前書きとか第1章を読むと言うことである。
微分形式の幾何学(森田)の最初に、多様体とはから特性類までのストーリーが非常にコンパクトに書いてある。接続の微分幾何とゲージ理論(小林)の1章は多様体の基礎が最小限に詰め込まれている。こう言う所を読んでこれから何を勉強して行くのかを知るのが良い。
さて王道(だと私が思うもの)。
まずつべこべ言わず、多様体の基礎(松本)を読むべきである。読者が理系の大学2年生以上なら誰でも読めると思う。前提知識はいらないはず。最初わからなくてもなんでも毎日ひたすら読む。
次に、曲線と曲面の微分幾何(小林)。正直、多様体の基礎を読んだ後にこの本を読むと読みにくい。曲面論と共変微分の入門書として使った。本に書いてあることを理解するというより、自分の言葉で曲面論や共変微分とはを考えるための指針として使ったように思う。だから全く順番通りには読んでいない。
あとはTu.
おまけ。
自分が読んだ本の中の知識は、自分の中では当たり前なのであんまり語りたくない。でも読んでない本についての解説は妄想だから楽。そこで読んでいない本について1冊紹介。
また微分幾何は物理学科において、一部の分野の人が、独力で身につけておかない知識となっているようだ。独力というのは、コースの授業で開講はされないけれど早めのうちに情報を収集して一人でに習得しないといけないという意味で用いた。そういった人に人気なのがいわゆる中原トポロジー。
まず、集合位相の基礎から始まり、位相幾何(ホモロジー 、ホモトピーとか)を経由して、多様体に入り、deRham コホモロジーへ到達する。次に、接続の話、複素多様体。これは最終的なファイバーバンドル上の特性類への布石と思った方が良いのだろうか。ここで上巻は終了。
下巻がいわゆるファイバーバンドル上の特性類の計算を目指すものになっているはず。
不必要に全ての証明を行わず、むしろ得られた知識で具体的な計算ができるようになるのが目的という点で数学科向けの本とは性質が異なると思う。ここから入門しても良いのかもしれない。ただ私自身は読んでいない。
最後に。
どの本から入門すべきか。簡単な本から入るのも、もしかしたら良いのかもしれないが、致命的な難点がある。理工系の本を読むと往往にして本に書いてあることから自分で論理を再構成しようとする。しかし簡単な本の上で語られた質素な知識からこれを行おうとすることは困難なのだ。どうしても幾分重厚な本でないと難しい。そしてこれを可能にする最低限の位置にあるのが松本多様体だということだ。一度そういう本を見つけてしまえばあとは自ずから、ひとりでにその分野を旅し続けられるのではないか。
付記。
この記事にきた多くの人は読まないだろうけれど、参考程度に書いておくこと。
結構他にも本がある。
新しい本として藤岡の多様体があり評判がいいように思う。読んでいない。
少し前に出た本で坪井のシリーズがある。多様体入門を読んだ。よかったと思う。しかし、そんな簡単じゃない。結構難しいと思う。あとノートを拡充したものに近いので、非数学者が取るべき本かは微妙。
松本多様体の後ろで村上の本を次に読んだらと進めている。リーマン幾何への入門的な立ち位置。松本を読んですぐの人には内容が高度に感じるかもしれないが、実際題材は平易なものに思う。しかし、文章が数学科向けな気がする。読んでいない。